ドイツと日本のビールのこと
ドイツと日本のビールは違う。
でも、どちらもうまけりゃハッピーだ。
ドイツに行ったことがある。
男二人でロマンチック街道。
目的はビールとソーセージ。
季節は10月。
すでにずいぶんと寒かった。
オクトーバフェストには若干遅かったものの、
行く町行く町でビールを飲み、
ソーセージを食らい、
とてもドイツを満喫した。
行く前までは、
ドイツのビールとソーセージはうまいと聞いていたので、
次元が違うほどにうまいのかと思っていた。
それが、ドイツについて最初の、
フランクフルトのレストランでも、
うまいビールだ、うまいソーセージだ
としか感じなかった。
ビールは新鮮な生ビールに近い味がしたし、
ソーセージも日本ハムのアンティエレモン&パセリに近い味がした。
「今まで食べてきたものはなんだったんだ」
といった、感想を持たなくて、
正直安心したものだ。
ドイツ旅行は、フランクフルトに入り、
ロマンチック街道を通って、
ミュンヘンに抜けた。
着く町ごとに、ビールを飲む。
どの町で飲んでもビールがうまい。
それなのに、どのビールも味が違うのだ。
これと同じことは、
さぬきにうどんを食いにいったときも感じた。
行く店行く店、どのうどんもうまい。
それでいて、どの店のうどんも違う味だった。
ビールも、うどんも、うまいという一言の中に、
ここまでの多様性があったのかと驚かされた。
日本のビールと、ドイツのビール。
同じうまいビールなのに何が違うんだろうか。
日本では大手ビールメーカーが市場のほとんどを握っており、
生ビール=大手メーカーのビールという構図になっている。
市場規模はほぼ変わらず、
その中でのシェア争いが繰り広げられている。
この中でシェアを伸ばすために行う商品開発の手段としては二つ。
他社と同じものを作る方法と、
他社と違うものを作る方法だ。
他社と同じものを作ることで、他社製品と交換可能になるし、
他社と違うものを作ることで、他社製品との優位性をうたうことができる。
多数ラインナップをそろえることは、
生産性が悪くなるので、
巨大市場であればあるほど、
少品種、大量生産を目指す。
その結果、他社とは若干の差異があるものの、
ほとんど同じ商品だけが、
市場に流通することになる。
まさに日本のビールはそうなっている。
その中で、若干でもクオリティをあげることは、
企業としての優位性を上げる可能性があるので、
かなりの努力が行われてきたのであろうことは
想像にかたくない。
商品の味を改良することは、
市場の要求にこたえることになるし、
歩留や生産性の向上は、
大規模生産であればあるほど、
企業の利益に直結する問題になる。
同じ量を、同じ価格で売る以上、
クオリティが上がっても、
それにより売上が伸びるよりも、
製造コストがかかってしまっては、
シェアが拡大するメリット以外に、
企業には何も残らない。
企業だから、安定生産ということも
考えなければいけない。
設計した品質をそろえるべく、
企業はできる限り、同じ原料を購買したいが、
天候の問題、使われる原料の地方、品種によって、
ずいぶんと製品に違いはでてくる。
そのあたりも吸収できる、
商品の製造方法、設計をしなければならない。
したがって日本のビールは、
コストとクオリティのバランスが
とてもよいビールばかりになった。
似た原料から、できる限りよいものを、
できる限りたくさん作ろうとしたら、
似た商品になってしまうのは、
結果としてはしょうがないだろう。
今のデスクトップパソコンのように。
そのような経緯で培われたノウハウが、
低価格ビール(発泡酒、その他雑酒)というジャンルにおいても、
いかんなく発揮されているので、
ビールとは違う味ではあるが、
それはそれで飲める飲み物が、
できているのだろう。
ときたまサントリー「kire」のように
とんでもない物ができてくるのも、それはそれで一興。
それに対して、ドイツのビールはというと、
国内に1,270もの醸造所があり、
ビール会社は地元密着で販売している。
どの醸造所も長い歴史を持っており、
そのなかで醸造所ごとの特色ができただろうし、
特色を持った醸造所は、客を裏切れなくなる。
その中でとるべき方法は二つ。
同じ味を作り続けることと、
毎回違う味を作り続けること。
客は同じビールを飲むことで、
安心感を得られるし、
毎回違うビールを飲むことで、
差異を楽しむことができる。
それの二つの条件を満たすべく、
とられた手法は、同じポリシーでビールを作る、
といったことだったんじゃなかろうか。
採れる作物は、毎年違うわけで、
作物が違えば、違う味になる。
好天の味、荒天の味。
それぞれ毎年違うはずだ。
その原料を職人さんが自分のポリシーで、
ビールを作り、供給する。
ドイツの人は違いを楽しみながら、
同じビールを飲んでいるんじゃなかろうか。
地元から愛されるということは、
努力の歴史の上にあるもので、
その結果残ってきた手法が
それぞれの店なり企業なりにおいて違うことは
あたりまえのことだ。
ドイツのビールを薄いと感じたこともある。
日本のビールが、70%の力の原料の味を
100%引き出しているのに対して、
ドイツのビールは、100%の力の原料の味を、
70%しか引き出してないように感じる。
昔、テレビで小堺一機が、ミュージカル映画スターの
ジーン=ケリーとフレッド=アステアの違いを、
解説していた。
二人が回転してポーズを決めるとしたら、
ジーン=ケリーは、その技量をフルに使って、
4回転して、ピタリと決めるだろう、
フレッド=アステアは、5回転できる技量を持ちながら、
3回転だけして、ふわりと決めるだろう、
といっていた。
両者ともにすばらしい演技だが、
前者は誠実な印象を持つだろうし、
後者はゆとりのある印象を持つだろう。
日本のビールとドイツのビールにも
同じことがいえる。
でも、どちらがいいかだなんて、趣味の問題だ。
日本のビールは、
がんばりすぎているが、
それはそれで、誠実な、うまいビールだ。
うまさに多様性がある、ドイツのことは、
うらやましいが、ドイツにいたところで、
毎日同じビールを飲むんだろう。
今日一杯のビールがうまかった。
それでいいんじゃないかと思う。
コメント
以前、ドイツ人が日本でビールと認めるのはエビスビールだけなんて話を聞いたことがあります。他のビールはマイスター性を感じられないからだとか。
ドイツカメラもいいですが、ビールもステキですよね。
投稿者: fenrir | 2005年09月21日 10:35
こんにちは!授乳期間が終わったらビールで乾杯したいなぁ。
きっと「うまい」って思うだろうなぁ。
プハーって深呼吸した息を身体の奥から!言うつもりです。
ドイツも行ってみたい国です。木のオモチャとか、
マイスターの作る手仕事。手をみたい。握手とかしてほしい!
投稿者: pbゆの | 2005年09月21日 11:30
>fenrir さん
マイスタ性ってやつは、
今もっとも必要とされているものだと思います。
人が作ったものを、使うのも人。
誇りある人の作ったものは、
使う人に心地よさが届くものです。
>ゆのさん
男の人が、一生口にできない一杯ですね。
禁酒ってしたことないですが、
久しぶりに飲むビールとかって、
たまんないだろうなぁ。
ドイツの町は、みっちりとコンパクトで、
かわいかったです。
どこの町にも聖堂があり、
入ると天井が高く、光に満ちて、
厳かな空気が素敵でした。
ドイツの南のほうは
空がとにかくきれい。
日本に帰ってきてから、その話を
ミュンヘンに住んでいたことのある友人にすると、
青い空はバイエルン州の誇りで、
州の旗の色にもなっているんだとか。
ヨーロッパはドイツにしか行ったことはありませんが、
とってもいいところでしたよ。
投稿者: funae | 2005年09月22日 01:18