
Rio Carbonを買った。
私がMP3プレイヤーを買うだなんて、なにより私がびっくりだ。
MP3は、嫌いだった。
出されたものはそのまま食うのが一番だ。
育て、収穫し、料理していただいた人に対して、
食べる側が勝手にさらに料理重ねるだなんてことは失礼きわまりない。
せっかくCDというメディアで音楽データを買っているのに、
テープやCD-Rのようにコピーするときの、不可抗力として劣化するのならまだしも、
聞く側の都合で、音のデータそのものに手を入れるだなんていうことに、
八百屋で長ネギを買って帰るときに、ばきりと二つ折りにして買い物袋につっこむような、
抵抗を感じていた。
みんなフランスパンだって長いまんま家に持って帰りたいものだろう。
その程度といってしまえば、その程度のことなのだが、
くだらないことだけに、そんな感情を払拭できずにいた。
くだらないことだけに、そんな意地なんてすぐになくなってしまう。
会社の先輩に「特選!! 桂米朝落語全集」を貸してもらい、ちょくちょく聞いていたのだが、
どんとまとめて40枚もあると、持ち運びが困難。
少枚数ごとにまとめて持ち運べばよいのだが、
これだけたくさんあると、いちいち入れ替えていくのもおっくうだ。
私の彼女は、i-pod miniが出た直後に買ったものの、
普段は仕事場のMACで作業をしているようで、
使っているところはあまり見ない。
先日、旅行の前に、家でi-tunesをいじってCDをMP3化して転送するのを、初めて見た。
急いでいるはずなのに、ちゃっちゃとリッピングしてエンコードをかけていく。
ユーザインタフェースとしては洗練されていると言っていい。
やはり面倒は面倒だろうけれども、CDを何枚も持ち歩くよりも、
小さくまとまっていた方が、聞く機会そのものも増えるだろうし、
少々の音質が落ちたところで落語のCDなら問題ない。
彼女が出かけていった後、がらんとした部屋の中で、
スーツのポケットの中に無理なく、落語のCD40枚のデータが入る、
1インチハードディスク内蔵のMP3プレイヤーが、なんとなくほしくなった。
今買うとするのならば、選択肢は
EVERGREEN HDMP300/HD4
Creative Zen Micro
Creative MuVo² FM
iriver H10
i-pod mini
OLYMPUS m:robe MR-100
Rio carbon
になる。
結論からいうとジョグダイヤルがついているから、RIO carbonにした。
携帯するということは体の一部になるということとほぼ同義。
それならば操作が直感的で、入力しやすく、
その反応がわかりやすいということが大事。
さわって確認することができないと、
買ったものの、使わなくてお蔵入りになるかもしれない。

というわけで、一番安いものの、NET通販がメインで、
一部PCサクセスやDOS/Vパラダイスで店頭販売されている程度の、
EVERGREEN HDMP300/HD4は選択からはずれた。

Creative Zen Microはカラフルで、オレンジやグリーンなんかは、
ほかのMP3プレーヤにない目を引く色だ。
ところがさわってみると、どのような操作体系になっているのかさっぱりわからない。
曲を再生したいと思ったら、プレイリストに登録しないといけないようで、
その選択の仕方もよくわからない。
プレイリストという認識をプレーヤ側が持つのはかまわないが、
そんなのCDの再生曲順選択くらいの必然しかないはずだ。
今使っているSONYのDISKMANに、再生する曲順を選べる「プログラムモード」というのがあるけど、
そんなの使ったことがない。
そもそも、操作する私自身が曲を聴きたいときに、考えることとずれがある。
私が音楽を聴きたいときに考えることは、
アーティスト名、アルバム名、歌詞のあるなし、ジャンルくらいしかなく、
そんなものはMP3のID3タグに登録してある程度のことだ。
プレイリストにわざわざ登録しなければ、ただ一枚のアルバムも聞けないだなんて、不便すぎる。
私は、MP3プレーヤを、私はただ音楽をたくさんストックできる、
持ち歩き型のハードディスクとして買いたいだけであり、
その中から選びたい曲を選ぶことに手間をかけたくはないから、
プレイリストなんていうものを、屋外でわざわざ作りたいと思わない。
音楽を聴きたいときにいちいち、
お気に入りのテープなり、MDなり、CD-Rを編集しはじめる人なんていないだろう。
選択するために必要な操作は、その時間かステップ数を平均したときに、最小であるべきだ。
それなのに、プレイリストに登録するという考えを受け入れると、必然的にステップ数が増えてしまう。
だから、プレイリストがあることには異を唱えないが、
プレイリストに登録しないと、聞きたい音楽を聴くことができないというシステムは受け入れられない。
また、自分が指先で操作したことが、本当に反映されているのかわからないぐらいに、
ポインタを動かすタッチパッドの反応が悪い。
古くなった銀行のATMを10倍悪くした感じだ。
タッチパッドは上下方向の動きに反応する(のだと思う)が、
指をスライドさせてて、曲やメニューを見ようとしたときに、
タッチパッドの一番上から一番下までスライドさせてもあまり進まないので、
上から下へと何度もの撫でなければならない。
10cm四方しかない場所で、マウスを使っているようだ。
また、悪い光学式マウスのように、タッチパッドから指をはなすときに、
ポインタが少し動くことがある。
その上、ポインタが、自分の操作よりも少し遅れて動くので、気持ちが悪い。
携帯するもので、ここまで気持ち悪いのも珍しい。
あまりにもひどいユーザインタフェースなので、持つ気が失せた。

Creative MuVo² FMは、検討したMP3プレイヤの中で2番目に安い。
持ち歩きハードディスクと考えるととても良い。
でもCreative Zen Microと同じような操作体系なので、
どのように曲を鳴らしてよいのかさっぱりわからない。
その上、操作するための十字キーの反応があまりにも悪いので、
まともにポインタを上下に動かすことすらおぼつかない。
5ギガバイトも音楽データをMP3形式で入れたら、とてつもないファイル数になる。
その中からお気に入りのデータを選択するのに、
ボタンを一度押しても、ポインタが一つしか動かないようでは、
パソコンのポインタを、マウスなしに、十字キーのみで動かさなくてはならないようなもので、
途方に暮れるはずだ。
リモコンで操作できるとも聞いたが、それほど操作性が良さそうではないので、
試すことはできなかったが検討するまでもなく、選択からはずすことにした。

iriver H10は、無駄に値段が高いくせに、操作感もあまり気持ちよくないので、選択からはずした。

i-pod miniは、この手の中で一番売れている。
形もかわいいし、触感もいいし、所有欲を満たしてくれそうだ。
問題点としては、i-tunesがないと音楽データを転送できない、
データを持ち運ぶためのハードディスク(ストレージクラス対応)として使えない、
電池の持ちが悪い、というところがある
(電池に関しては、新製品になって改良されたようだ)。
Creative Zen Microという悪い例を使った後だからわかるのだが、
タッチパッドが丸くなっているので、指をはなさなくても、ずっと先まで送れて便がいい。
でも、タッチパッドは、動かしている実感に乏しいので、元々好きではない。
昔から、タッチパッドのついているノートパソコンは避け続けてきたくらいだ。
外で歩きながら使うときに、自分の意図しない動きが指先に加わったとしても、
ディスプレイを見ないと、意図しない操作をしたことが確認できない。
それに対して、操作そのものにクリック感のある、キーボードやボタンというのは、
自分が操作したことを、自分の触覚で再確認できるので、
いちいちディスプレイを確認しづらい外での操作に優れている。

OLYMPUS m:robe MR-100 は形が良く、所有欲を刺激されたが、
タッチパッドであるのと、初期不良が多いらしいのと、
専用ソフトを使わないと音データを転送できないかもしれないので、
迷ったものの選択からはずした。

そうすると残ったのが、Rio Carbon。
これが、調べるまで知らなかったのだが、ジョグダイヤル付き。
SONYの製品によくついている、くるくる、ぴっぴのあれだ。
SONYの製品がしいて好きなわけではないが、
最初に持った携帯電話がジョグダイヤル付きだったり、
テキストビュワーとしてとてもよくできていたインフォキャリーにも、ジョグダイヤルがついていたり、
気に入って持っていた携帯情報機器にはよくジョグダイヤルがついていた。
ただリストから情報を選ぶときには、ダイヤルを回して、
かちりかちりと、一つずつ送っていけるほうが安心感がある。
メニューにしてもメニューボタンを押して、
全曲表示された状態か、アーティスト名か、アルバム名かジャンルを選んで、
表示されている全曲を鳴らすか、曲を選ぶか。
それだけなので、私が今何を聞きたいという欲求を、最小手数でかなえてくれる。
バッテリはカタログ上では20時間保つことになっている。
データの転送は、USBケーブルで繋ぐと、ストレージクラスのハードディスクとして認識するので、
MP3データをコピーするだけ。
繋ぐケーブルはUSB-miniBなので、ふだんから京ぽんや、シグマリオン3用に持ち歩いているし、
パソコンに繋げば充電もできる。
MACユーザーならi-tunesも使えるそうだ。
音質に関しては、比べていないのでよくわからないが、聞いてみたところでは別に悪い気はしない。
価格はPCサクセスで23,800円。
心は決めたものの、歩き回っていると、ソフマップの中古が22,000円で売られている。
なんとなく中古を購入。
中古のヘッドフォンは使いたくないので、
耳かけ型のAUDIO TECHNICAの安いイヤフォンもあわせて購入。
買って、会社に帰るなり、パソコンに繋いで、MP3を転送して聞いても、
音が劣化しているという違和感を感じない。
普通だ。
スーツの内ポケットの中にRio Carbonをおさめ、帰宅しながら音楽を聴く。
Rio Carbonを取り出して操作しても、相変わらず違和感を感じない。
すでに何年か使っているような気さえする。
どうやら私の生活に必要だったらしい。
音楽のある生活が、久しぶりに再スタートした。